昨年12月初旬、東京・高田馬場駅近くの歌声喫茶「ともしび」。50人ほどが入る店内で、高齢者たち十数人がピアノの生演奏に合わせ、「青い山脈」や「ルージュの伝言」など懐かしい曲で一緒に歌声を響かせていた。マスクを着け、まだコロナ禍の影響が残る。
隅で一人、机に肘をつきながら座っている男性がいた。お酒を飲む人が多い中、手にしているのはホットコーヒー。「お酒が一滴も飲めないんですよ。だからずっと独りなのかな」と笑った。
いま82歳。親から継いだ新宿区の一軒家でひとりで暮らす。昔から人付き合いが苦手だった。自分の葬式に来てくれるような友達はひとりもいないという。
「人間関係を持つと、多少なりとも人を傷つけたり、自分が傷つけられたりするでしょう。迷惑かな、と人に話しかける自信がないんです。だから酒が飲めたらなって思いますよ」
コロナ禍を乗り越えて歌声喫茶が再開しました。そこには歌を生きがいにするお年寄りの人間ドラマがありました。
心のよりどころが、歌だった…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル